羊蹄山は今日も、無い。
我が家のリビングからは、晴れていればニセコ の名峰・羊蹄山(ようていざん)が見える。そして、それが見える日はあまりない。
冬の羊蹄山はシャイらしい。
こちらに引っ越して来る前から、山好きの私は、それの富士山のようなフォルムの勇姿を見ることを楽しみにしていたのだが、顔を出してくれる日はそう多くない。
「羊蹄山、今日も"無い"ね。」という会話が、我が家では日常茶飯事になっている。
しんしんと降り続く雪の向こうでは、灰色の雪空が深い奥行きをもって広がり、山の気配すらも消してしまうのだ。
そうと思えば、時々、いきなり姿を現すこともある。
それを初めて見たときは、いや、いつみても、何度見ても、心が揺さぶられる。
そして姿を露わにしたと思いきや、それはマジックのように、ポンっと無くなってしまう。
羊蹄山は、今日も無い。
でも、いつもそこにある、とわかっている。
それだけで、私の心は踊らされている。