ファースト・トラックを求めてやまない人たち

First Track ©︎Nashy, 2021

今年のニセコのスキー場は贅沢だ。観光客が少ないので、ゴンドラ やリフトは待たずに乗ることができる。これは、例年ではあり得ないことらしい。すごい時には「長さ30m、幅6mの列を見て、萎えて帰った」という地元民にも出会った。

さて、ゴンドラ やリフトは通常8:30 から運行しているのだが、それを我一番にと、狙う人たちがいる。
そう、「ファースト・トラックを求めてやまない人たち」だ!

しばしば、地元に住む人たちや、スキー、スノーボードの熟練者らがそれにあてはまる。

ちなみにファースト・トラックとは、誰も滑ったあとのないふわっふわの雪を、自分が一番に滑ることだ。

朝一番の、上質なパウダースノーのまっさらな白地のキャンバスに、自らの軌跡をきざみながら進む爽快感を、あなたはご存知だろうか?

私はまだ知らない。正確にいえば、ようやくわかり始めたところだ。ニセコ に住み始めて2ヶ月になるが、8:30ぴったりにゴンドラ に乗ったことは、これまでで1度しかない。(どや!)「住んでいるから」こそ、朝寝坊して怠けてしまう。

ある朝、8:15にゴンドラ に到着したにもかかわらず、もうそこには15名ほどが並んでいた。例年なら、ファースト・トラックが欲しければ、1時間以上前から待つことも当たり前だとか。

そして、8:30のゴンドラ 周辺は、少し空気がぴりぴりしていることにも気がついた。そう、みんな自分が一番に滑りたい気持ちは一緒なのだ!

たとえ外気温が-15度でも、彼らの情熱はあつい。

朝に弱い私が、ふだんゴンドラ に乗り込むのは早くとも9:00頃だ。

もうその頃には、あのピリピリ感はなくなっている。

そして、ゴンドラから山の斜面を見下ろすと、そこには「ファースト・トラックを求めてやまない人たち」が味わったであろう、至福の軌跡が、何本も何本も見える。

P.S. このイラストのような「大雪原に1人だけ」なんて体験は、スキー場ではそうそうできないだろう。夢のまた夢だ。

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