ゆりねって食べたことある?
ニセコ では、最近ようやく最高気温0度を上回る日が増えてきた。先週末、こちらでは青空が広がったので、近隣エリアに観光に行った帰りに、ずっと気になっていた場所へ立ち寄った。
ずっと気になっていた場所とは、「ニセコ ビュープラザ」という道の駅である。
地産地消・安全安心の農産物直売所
お目当てはニセコ ビュープラザ内にある「農産物直売所」だ。農作物が置かれる商品棚には「私が作りました!」といったコメントとともに、生産者の顔と名前が掲載されたポップが貼られている。そんな、安心・安全・おまけに安価な農作物を提供してくれる直売所は、田舎暮らしの食卓のQOLを爆上げしてくれる聖地なのだ。
こういった直売所は、田舎暮らしの経験がある方には馴染みがあるかもしれない。私も山形県の田舎で育ったので、至る所にこういう場所があり、子供の頃から連れられて行った記憶がある。——あれから十数年——こういう場所に関心が出てきた自分に、老いを感じずにはいられない。
「ゆりね」から逃げられない
さっそく直売所の中に入ってみると、朝一番で収穫されたご立派な農作物たちが所狭しと並んでいて、あれも、これも、と気になってしまう。今の季節は越冬キャベツや人参などが旬のようだ。ニセコ は、5月になったらアスパラガス、夏は夏野菜の数々やメロン...と1年を通して豊富な農作物が手に入る。
ところで、「ゆりね」という農作物をご存知だろうか?私はニセコ に来てから初めてその存在を知った。「ゆりね」とはそのまんま「ユリの根」のことである。スーパーでは、おがくずを敷き詰められた段ボールの中に埋められた状態で売られていることが多い。
私はこのゆり根を、数ヶ月のあいだ、なんとなく敬遠していた。なんといっても、見た目がまさにTHE・球根で、ニンニクの房がいくつも集合したようなぼこぼこした出で立ちは、集合体恐怖症(Trypophobia)の気がある私から見れば、それはモンスターのようだった。
しかし、どこに行っても「ゆりね」と会ってしまう。それもそのはず、ゆり根は約99%が北海道で生産されているのだそうだ。
このたび、ニセコ ビュープラザにおいても、やはり「ゆりね」を避けて通ることはできなかった。「もはや、ここまでか」という謎の諦念に達し、ついに購入に至った。
得体の知れないものを食べる
家に帰って「ゆりね」をじっくり観察してみるのだが、見た目はやはり気持ちが悪い。イラストを描いている最中にも思ったのだが、なんといっても"映えない"。
下処理の仕方をググってから、外側の鱗片から一枚一枚ぺりぺりと剥がしていく。剥がれ落ちた鱗片はコロンとしていて、なんだか砂浜で見かける貝殻のようだった。
それらを、今回はバターホイル焼きにしていただくことにした。材料は、「ゆりね、バター、塩」のみだ。
焼き上がり、恐る恐る食べてみる。
すると、どうだろう!その見た目から、ニンニクやらっきょうのようなツンとした匂いや、辛みや青みがあるのかなと思っていたのだが、驚くことなかれ!なんと、甘いのだ。しかも食感はじゃがいもよりもホクホクしている。私がうまく言語化できないでいる傍で、マイコーさんが「栗みたいじゃない?」と的確なことを言ってくるので褒め称えてしまった。
味噌汁や天ぷら、炊き込みご飯、グラタン、もう何にでも合うらしい。
しかも炭水化物を主成分として、タンパク質、カリウム、鉄、葉酸、食物繊維、ビタミンCも含まれており、女性にも嬉しい。(参考URL「知って、食べて、ゆり根」)
数ヶ月も敬遠していたモンスターは、実は相当、人間の味方だったようだ。
「ゆりね」って食べたことある?
私の食わず嫌いを克服したような内容になってしまったが、まだ「ゆりね」がなんだかわからない人、食べたことのない人は、機会があればぜひ食べてみて欲しい。きっと、あなたの固定概念を吹っ飛ばしてくれるはずだ。
P.S.「ゆりね」は食卓に届くまで、約6年もかかるらしい。生産者に脱帽・敬意を表するとともに、日本人って本当になんでも食べるなあ...と感じた日であった。